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執筆者の写真Hirokazu Kobayashi

1世代:ここ70年間で10歳延伸!

更新日:7月10日

小林裕和

(株)グリーン・インサイト・代表取締役/静岡県立大学・名誉教授・客員教授

 

長谷川町子 (1920年〜1992年) による漫画 「サザエさん」 のアニメ版では、波平54歳、フネ52歳、マスオ28歳、サザエ24歳、タラオ3歳の設定。この新聞連載は1946年から始まった。一方、私は父母の相次ぐ永眠に際し、手続きのために改製原戸籍 (古い方の戸籍) を取ったところ、私が生まれた1954年に、祖母は46歳、曾祖母は65歳だったことが判明し、その若さに驚いた。この年齢構成は 「サザエさん」 の磯野家のそれと重なる。ところが、私に初孫が生まれた2018年、私は63歳だった。これらから計算すると、1950年の1世代は第一子で約20年。2020年のそれは約30年となる。すなわち、1世代は10歳延伸したことになる。厚生労働省の調べによると、女性が第一子を出産する平均年齢は、1976年に25.7歳、2015年に30.7歳となっている。海外では、アメリカ合衆国が2007年に25.2歳、イギリスが2004年に27.4歳、オーストラリアが2006年に30歳と報告されている。過去と比較すると、これらの国々でもこの値は伸びている。これは、平均寿命の延伸や社会構造の変化による結婚の後期化が原因であると思われる。

 

平均寿命とは0歳児の平均余命。2022年時点で、日本の男性が81.05歳、女性が87.09歳。男女平均値84.3歳となり、世界1位である。平均寿命の延伸は、多くの国々で共通し、これは過去1世紀の間に生じた生活水準の向上と医療の進歩によるものと考えられる。社会構造の変化として、単身世帯の増加傾向は多くの国々で見られ、これは一人暮らしを可能にする経済的要因や個人主義による。また、北欧を中心として、子育てや老後に対する社会的支援システムが整備されてきた。これらの変化により、結婚や子育てなどの人生の各段階が遅れ、1世代が長期化した。このような家族や社会の進化が、逆に、経済、社会、医療システムに影響を及ぼしていく。

 

高齢社会の進展に伴い、いくつかの社会的・経済的問題が想定される。年金制度や医療システムへの負荷が増大する。若い世代が相対的に少なくなるため、彼らに高齢者ケアや社会保障の負担が大きくのしかかる。これにより、若い世代の経済的な自由度が制限される。労働力人口が減少し、経済成長が鈍化する可能性も挙げられる。家族構造の変化により核家族となり、家族内での世代間の交流が少なくなる。その結果、孫と祖父母の関係が希薄になり家族内の支援システムに変化が生じる。親や祖父母が高齢になる中で子供を持つ家族が増えると、教育やキャリアの選択にも影響が生じる。親が高齢であることで、子供への投資が変わる可能性が挙げられる。これらの問題に対処するためには、健康寿命を延ばす努力、高齢者の社会参加を促進する政策、世代間のバランスを考慮した福祉制度の再構築など、多角的なアプローチが必要となる。家族の形態や機能に対する理解を深め、支援策を考えることが重要である。




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