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執筆者の写真Hirokazu Kobayashi

身近なユダヤの人たち:その魅力!

更新日:7月11日

小林裕和

(株)グリーン・インサイト・代表取締役/静岡県立大学・名誉教授・客員教授


イスラエル軍によるガザ地区攻撃は、子供を含む一般人にまで及び、世界随所で非難の声が上がっている。ユダヤ人により建国されたイスラエルだが、教授陣や学生としてユダヤ人を少なからず抱える米国・ハーバード大学において、イスラエル軍容認の大学の姿勢に抗議する学生がその卒業式会場にて蜂起。これは、政策に関するユダヤ人の内部分裂を物語る。世界総人口の0.2% (500人に1人) に満たないユダヤ人が世界に投げかける波紋は、いつも大きい。被害者となった第二次世界対戦におけるホロコースト。昨年映画化されて話題を呼ぶ “オッペンハイマー” もまたユダヤの人。ロバート・オッペンハイマー (1904年〜1967年) は 「原爆の父」 と呼ばれる。これは、科学の過ちとして歴史に刻まれることになるが、オッペンハイマーの懺悔とその後の活動は、原爆投下を正当化する政治家とは一線を画する。

 

彼らは知的で、頭脳明晰、さらに傲慢でない人たちであり、私にとっての好感度は高い。1982年度に文部科学省が、若い研究者を対象にして 「海外特別研究員制度」 を開設し、全研究分野からこれに10名が選抜された。日本の国費にて、世界各地の大学で学ぶ機会が保証されたのだ。年額370万円の生活費に加え、研究費100万円、それに渡航費が支給された。幸運にも私は、これに植物学分野から唯一の人材として選ばれる機会に恵まれた。このような待遇であれば、世界のどの大学も受け入れを歓迎してくれる。当時黎明期であった遺伝子の分子レベルでの研究において、世界最先端を走っていたハーバード大学ローレンス・ボゴラード教授 (1921年〜2003年) の研究室の門を叩いた。ボゴラード教授に始めてお会いしたのは1983年2月。ボストンの冬は寒く、その最中にボゴラード研究室を訪れた。博士研究員としてボゴラード研究室に所属したのは2年間弱であるが、その後2003年12月にお亡くなりになるまで、ほぼ毎年のように、ボストンか日本でお会いした。彼は、米国科学界を代表し学術雑誌 “Science” を刊行する "アメリカ科学振興協会 (AAAS)" のプレジデントも務められた。また、"米国科学アカデミー (NAS) 会員" であり、ノーベル賞受賞対象となる研究が数多く発表される "米国科学アカデミー紀要 (PNAS)" の編集に長年に渡り尽力された。研究は、生物による唯一の太陽エネルギー獲得系である 「光合成」 に注目し、光合成の場である植物細胞内 「葉緑体」 の遺伝情報とその発現機構の解明が中心であった。ボゴラード教授の友人であるアンドレ・ヤーゲンドルフ教授 (1926年〜2017年) は、光合成におけるエネルギー分子ATPの生産機構 「光リン酸化」 を解明された。植物学分野でのノーベル賞はないので、その栄誉には浴されていない。ご本人は農夫になりたかったとおっしゃっていた。これまたユダヤの人であり、親しくお付き合いさせていただいた。

 

ユダヤ人と日本人には、複数回に渡り歴史的な交流が見出される。ユダヤ人のルーツとされるシュメール人は、縄文人と同様に多神教であり、それぞれの逸話や文字に共通性が高いことが指摘されている。縄文時代は紀元前14,000年〜紀元前400年ごろとされており、シュメール文明は紀元前5,500年〜紀元前3,000年ごろとされる。紀元前700年代、アッシリア帝国がイスラエル王国を征服した際、イスラエルの10部族の一部が日本に渡ったという話があるが、根拠は弱い。つぎの接点としては、中国の秦王朝の崩壊後の紀元前210年頃、ユダヤ人にルーツを持つ徐福 (紀元前255年〜210年頃) が渡来したとの説がある。あるいは別系統の可能性を含め、その後、秦氏 (はたし) がヤマト王権の要職に就いた。秦氏は神社を創祀したと伝えられ、多くのヘブライ語が現在に残る。「ミヤ (宮)」、「ミカド (帝)」、「ミコト (尊)」 など。第二次世界大戦中、日本領事館領事代理としてリトアニア・カウナスに赴任していた杉原千畝 (すぎはらちうね:1900年〜1986年) が、ナチスによって迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給し、その亡命を手助けしたことも有名な話である。日本とイスラエルは、直線距離にして約9,000 km離れている。紀元前5,500年ごろ、これを人の足で踏破するには2年は掛かると思われる。しかしながら、今ならヨーロッパ経由で15時間ぐらいの距離である。私は、エルサレムには二度訪れ、「嘆きの壁」 や旧市街で歴史に触れた。結果的に無差別なガザ地区侵攻は支持できないが、ユダヤの人は個人的には優れた魅力的な方々であると認識する。




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